【シリーズ】おすすめの1冊『14歳、明日の時間割』鈴木 るりか

こんにちは、りゅうまです。

シリーズ『おすすめの1冊」第30回です。
僕がおすすめする本や、話題の本などをご紹介していきます。

今日、ご紹介するのは、現役中学生作家、鈴木るりかさんの「14歳、明日の時間割」。

『14歳、明日の時間割』鈴木 るりか

 作者はなんと中学生だ。デビュー作で10万部というまさに偉業を成し遂げている。確かに表現は若い感じがするが、中学生の作品とは思えない。帯にはあさのあつこ氏や俵万智氏が絶賛していることが書かれてある。作家を唸らせる中学生とは恐れ入った。でも、別に恰好を付けたような飾りっ気はなく、今率直に感じたことや子ども心に考えてきたを綴ってるんだろうなと思う。

 本作品は、7編の短編小説だ。「国語」、「家庭科」、「数学」、「道徳」、「昼休み」、「体育」、「放課後」の中で中学生6人と教師1人の悩みや葛藤を描いていく。まあ、ぼくの好きなタイプですね。(笑)
 この作品の面白いところは、中原君という登場人物だ。彼は、それぞれの物語にさらりと出てくる。彼は、文武両道でやさしい。彼を通して主人公たちは葛藤を乗り越える勇気を得ていく。彼は、人を前向きにできるのだ。なんでだろうな。別に相談に乗るとか励ますとかしているのではないのだ。「人の大切にしているものに寄り添える」といったところか……。いや、彼の魅力は実際に読んでもらうしかないのかもしれない。
 
 「数学」のはなしを紹介したい。
 坪田は両親の都合で、高校は東京に通うことになった。中学の成績は上位で親も期待。レベルの高い私立を受験させようとしている。ところが、模擬試験で公立中学のトップと私立との差を痛感する。本当は地元の高校に通いたい。そこなら今のままでも十分受かる。でも、その気持ちが受験から逃げ出したいからだということにも気づいている。焦燥感に打ちのめされながら日々が過ぎていくが、ある日の塾帰りにランニング中の中原にであう。坪田はそこで思いを打ち明ける。その日はそのまま解散になったが、次の日、中原から「俺んちから通えば?」と言われるのだ。最初は飲み込めなかったが、地元の高校を中原の家から一緒に通うという提案だった。中原は続ける。「ただ、ひとつ問題があって」「弁当のメニューが毎日俺とおんなじっていう……男二人お揃い弁当」。坪田はもう大いに笑った。

 ある特定の人物を取り巻く周囲の変化というのは一種の技法というか、書き方があるのだろう。2年くらい前に読んだ、朝井リョウの「桐島、部活やめるってよ」は、タイトルに桐島と出てきていながらご本人は登場しない。バレー部キャプテンの桐島が、部活をやめることで生じる周囲の変化を描く。また、井坂幸太郎の短編小説「首折り男の周辺」もそうである。これは、殺し屋の男とその男とは対照的におどおどしている男の話だ。この二人は顔がよく似ており、周囲に間違われていく。
 ぼくはこの手の作風がとても好きだ。一人の人物にいろんな視点がみられる。でも、この三作品は似て非なるものともいえる。『14歳、明日の時間割』では、中原君が登場することで周囲を変化させる。桐島は部活をやめるだけで、他の生徒がバレー部でレギュラーになったり、友達関係が変わろうとしたりする変化をもたらす。首折り男は周囲が二人を間違えることによって主人公の男を巻き込んでいく。書きながらそれぞれの展開を思い出すが、こう比べると本当に面白い。3作品のアマゾンリンクを張っておくので是非、読んでほしい。

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