シリーズ『おすすめの1冊』第48回です。
僕がおすすめする本や、話題の本などをご紹介していきます。
今日、ご紹介するのは、映画化もされた石田衣良さんの「娼年」。
『娼年』石田 衣良
リョウは、20歳の大学生で、バーでアルバイトをしている。彼は顔がよく、モテた。中二で初体験を済ませ、以降、恋人とセックスには不自由しなかった。しかし、彼は満足していたわけではなかった。
ある日、バイト先に現れた女性、御堂静香に、「セックスの値段をつけてあげる。」と言われた。
案内されたのは、彼女の自宅。だが、実際にセックスをする相手は咲良という女性だった。
5000円
リョウのセックスにつけられた価値だ。結果は不合格。しかし、そこに咲良が5000円を加えて合格に押し上げた。
「ギリギリで合格。すべて咲良のおかげね。あなた、うちのクラブで働いてみる気ある
?」御堂静香の経営するクラブは、女性に男の子を紹介する店だった。
この退屈な毎日を抜け出すことができるのだろうか。リョウは次の日、御堂静香に連絡をした。
はじめての仕事は、二時間半のデート。ぶらぶら歩きまわって、喫茶店でおしゃべりをしただけだった。次の日、同じ人から指名が入り、今度は最後まで付き合った。
法律には確実に引っかかる娼夫の仕事。だが、自分に合っているような気もしている。大学の友人に止められるが、かえってもっとたくさんの女性を楽しませてあげたいと思うようになる。リョウは、クラブの1位、2位を争うまでになった。セックスを求める女性と接して行く中で、いつしかリョウは、女性もセックスも退屈なものとは思わなくなった。3人でしたり、病人のふりをする夫婦など様々な形で経験を重ねていく。
そして、いつものように御堂静香から仕事の連絡が入り、待ち合わせをするとそこには大学の友人である、メグミの姿があった。
男の子を買う女性たちの思いは何だろうか。愛情だけがセックスの形ではない。さみしさ、スリル、快感……。まとめてしまえば単純だが、確かにそこに人の思いがあることに気づいていく。
リョウは感情が少なく相手の気持ちを考えることができる。だから、女性たちの感情や表情が引き立っていると思う。相手も安心して身も心もまかせられている。以前にも石田衣良さんの「sex」を紹介したが、彼の描く性は男女が共にある。男性のがつがつしたところはないし、かといって女性を過度に贔屓することもなく、お互いがお互いのためにある。そんな性の物語だなと感じる。