シリーズ『おすすめの1冊』第82回です。
僕がおすすめする本や、話題の本などをご紹介していきます。
今日、ご紹介するのは、東野圭吾さんの「あの頃の誰か」。
『あの頃の誰か』東野 圭吾
東野圭吾が1990年代に書いた短編小説を集めた作品。訳あって長年、世に出回らなかった作品たち8篇。
シャレードがいっぱい
中瀬社長はもう長くない。その遺産をめぐり事件は起きる。中瀬興産の子会社で働く北山が自宅で殺された。部屋は荒らされていたが金目のものは盗まれていなかった。北山の彼女である弥生は、真相を知るべく尾藤となのる男と協力して事件を追う。
中瀬社長が残した遺言書は2枚ある。1枚目は子供と親戚に分けるように書かれたもの。2枚目は不倫相手の間にできた畠山清美のことを明記ししたものらしい。しかし、2枚目の遺言書が誰かに盗まれてしまった。このままでは、親戚にも遺産が渡ってしまう。中瀬弘恵と中瀬雅之はなんとしても2枚目の手紙を見つけなければならない。
名探偵退場
魔王館殺人事件は本当にやりがいのある仕事だった。また、昔のように科学的な捜査ではなく謎解きで事件を解決したいものだ。
彼のもとに依頼が届かなくなって20年経つ。時代が変わってしまい探偵は必要なくなったのだ。今は静かに解決してきた事件を手記として自費出版することに専念している。しかし、彼のもとに20年ぶりに依頼が舞い込んできた。ロックウェルという屋敷の主人の命が狙われているというのだ。
現場につき、さっそく屋敷の者から話を聞いていく。しかし、どうも聞けば聞くほど魔王館殺人事件と酷似している。模倣犯なのだろうか。
感想
軽いジャブのようなミステリー集でした。多重人格者や亡くなった母親の魂が娘の体に宿り、娘として生きていく、というSFチックなものから妹を殺した男を恨み、執念深く追いかけ男にとって最悪の形で復讐をするものなど、8篇はどれも個性が強くて楽しめました。あとがきには長年掲載されなかった理由が語られており、「へー」とか「うん、そうかもしれないね」と思いながら読みました。