シリーズ『おすすめの1冊』第101回です。
僕がおすすめする本や、話題の本などをご紹介していきます。
今日、ご紹介するのは、中野信子さんの「人は、なぜ他人を許せないのか?」。
『人は、なぜ他人を許せないのか?』中野 信子
はじめに
社会を変えようとする人は、ねらっていなくても炎上してしまう。
空気を読む文化の日本にとって少しでも逸脱したり、同調性を乱したりするような過激な発言は炎上する。ときには自殺にまで追い込んでしまうような言葉を使って非難する人もいる。しかし、そもそもなぜ人は、何のメリットもない他人のことに首を突っ込み、「あなたは間違っている!」と発言したがるのだろうか。
正義中毒
本書には、その1つの答えが記されていた。
結論からいうと、他人を批判するとドーパミンがドバドバと出るらしい。ドーパミンとは、神経伝達物質で依存症の原因にもなる物質だ。それが、他人を批判すると放出され、快感を得てしまうのである。つまり“誰かを叩けば叩くほど気持ちよくなり、その行為をやめられなくなっている”のである。1人が何人もの人に批判コメントをしているという事実にもうなずける。私は今、こうして書評を書きながら、自分の快楽のために他人を傷つけるなんて許せない!と思ってしまった。これもまさに、正義中毒と呼べるものだろう。気を付けなければ……。
おわりに
もし、あなたが自分と無関係の他人を許せないのなら、本書はおすすめだ。きっとどれだけ無駄な時間を過ごしていたかがわかるだろう。また、無関係の他人に傷つけられた経験があるのならやはり、本書を開いてほしい。相手の発言の中身のなさ、愚かさがわかるはずだ。
日本人の気質上、ある程度同調を求めてしまうことは仕方ないと思う。しかし、そうした、ある意味本能に近い脳の特性を知り、「正義中毒に陥っているな。」と気付けるようになれば、他人に縛られる生き方から脱出できるのではないかと考える。