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【シリーズ】おすすめの1冊「エイジ」重松清

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今回はシリーズ『おすすめの1冊』第一回です。
僕がおすすめする本や、話題の本などをご紹介していきます。

目次

「エイジ」重松清

ぼくが重松清ファンとなった一冊だ。
中学二年生のエイジはバスケットボール部だった。しかし、成長痛による膝の痛みから 部活をやめてしまう。
バスケ部の元パートナーのいじめ、初恋、通り魔事件、その真相への戸惑い…。            なにもかもはっきりしない気持ちにいら立ちながら、でも何にも関心がないかのように見せてしまう。
主人公の周りで起こる日常的でリアルな出来事。つい自分の中学生時代と重ねてしまう。甘酸っぱい青春なんかではないけれど、エイジの気持ちや周囲の友達に共感できる部分が多いのではないか。もしくはこんなやついたなぁと。

我ながら全くあらすじになっていないことに笑ってしまう。
重松作品の特徴は何と言っても少年時代の心の葛藤を描くことだろう。あの頃の微妙な気持ちをうまく表現している。嫉妬心、大人へのあこがれ、気になり始めた異性…。でも、それを表に出すのは恥ずかしい。興味のないかのように振る舞ったり、逆に大げさに振る舞ったりして、自分の気持ちは相手にも自分にもわからないようにしてしまう。そんな経験はないだろうか。あの頃に抱いていた気持ちを小説とともにこうもうまく言葉で、しかも物語にのせて表現してしまう重松にまさに嫉妬を抱く筆者である。

なぜ、重松はこうも少年時代の物語を書くのだろうか。これはもっともっと重松作品に触れなければわからないことなのだろう。だが、推測するに「いじめ」が1つのキーワードであることは間違いないだろう。また、改めて感想を述べると思うが、「ゼツメツ少年」はいじめられている2人と孤独な女の子をテーマにした長編物語である。今こうして書いている瞬間にも思い出して鳥肌が立つほど強烈なインパクトを残した作品だ。        それから、「十字架」。いじめ被害者が自殺をしたところから始まる。つまり物語の視点は加害者側である。また、「きよしこ」は重松自身の物語である。吃音をご存じだろうか。言葉がつっかえる病気である。当時吃音はすぐにからかいやいじめの対象になってしまうことは容易に想像できる。今でこそ理解は広まっていると思われるが、重松の少年時代には難しいだろう。吃音であった重松にとっていじめは常に隣り合わせであり、少なくとも馬鹿にされたり、いらいらされた経験が豊富であるからこそ登場人物の言動がきれいごとでは終わらない、曖昧な表現であるが共感できる作品になるのだろう。

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