シリーズ『おすすめの1冊』第80回です。
僕がおすすめする本や、話題の本などをご紹介していきます。
今日、ご紹介するのは、岸見一郎さんの「幸せになる勇気」。
『幸せになる勇気』岸見 一郎
教育について考えることが好きな僕が読みながら考えたこと。
脅しのような言葉
叱るときの「△△して、○○になっても知らないよ」という言葉がぼくは嫌いです。この言葉は、完全に相手のおごりからくる言葉だと思いませんか。詳しく言うと「あなたが勝手なことをしてどうなっても責任はあなたがとるのよ。」ということだと思います。その言葉そのままで受け止めてよいなら問題はないのです。でも実際は勝手な行動をされたら困るから言っている言葉です。この叱り方の問題は次に予測される展開です。「私はきちんと注意をしたのに、あなたがやったのが悪い。」つまり「だから言ったのに。」と締めくくられるわけです。
なんだこの叱られるためのレールはと、憤りを感じます。「知らないよ」と言いつつ、さらに追い打ちをかけて叱ってくるはどうも納得がいきません。
このように叱る人は自分に責任が降りかからないように保険をかけているのだと思います。だって、本当に相手の責任で済むのであれば見守ればいいじゃないですか。本当に困るのは、「知らないよ」と言っている側なのに責任すら受け止めない身勝手な考えが「○○になっても知らないよ。」「だから言ったのに。」という脅しの言葉につながっているのだと思います。
子どもながら腹の立つ叱られ方だったなと感じていました。
叱ることも褒めることも教育方法としては発展途上
アドラーは、叱ることも褒めることも否定しています。教育・しつけの最終目的は自立です。叱られるから、褒められるから行動を改善するのではなく、もっと高次の「自分の役に立つ、相手の役に立つ」などの内発的な動機から行動するように導くのです。
(もちろん、初めから内発的動機づけは困難だと思います。あくまで最終目的です。)
人がどうすれば行動するのかということ具体的に解きほぐしてくれます。
行動面
①自立すること
②社会と調和すること
行動を支える心理面
①わたしには能力がある、
という意識
②人々はわたしの仲間である、という意識
叱ることが効果的だと思っている方へ
(叱る=大きな声で「ちゃんとやりなさい」と言ったり、「静かにしなさい」と言ったりすることとします。)
叱られることはいい気分ではありません。だから反抗する子もいます。誰でもわかります。もし、叱らないで自立を促すことができればどれだけよいかと、誰しも一度は考えるのではないでしょうか。でも、そんな方法は机上の空論として叱って伝えるしつけや教育を続けているのだと思います。そして自分も叱られて育ってきたし、周りもそうしているという経験論のみで教育していることでしょう。
叱ると子どもは言うことを聞きますが、すぐにまた叱られるようなことをします。僕は繰り返し叱ることで社会性を身につけさせるという考え方は、とても安直だと考えています。そもそも、「繰り返し叱ったから改善した」という根拠はどこにあるのでしょうか。子どもの脳が成長して自制心が効くようになっただけかもしれません。もちろん叱ったからかもしれません。もしかしたら、叱ることで逆効果だった事例もあるかもしれません。でも、それがわからないのに「叱らないと子どもになめられる」とか「甘やかし」という経験論は思考を停止させ、学ばない言い訳ではないでしょうか。僕は叱ることについてよいのか悪いのかまだわかっていません。だから、大きな声で叱ることを完全に否定することができません。ただ、叱ることよりもストレスを感じずに相手の行動を改善する方法はいくつも目にしてきました。実践と理論が違うことはわかります。でも叱ることに根拠を持っていない人には「机上の空論」と言われたくないのです。
人は誰しも、成長したいという向上心があります。しかし、中には向上心のかけらも感じない人もいます。子どもでさえばらつきがあります。それは成長したいという向上心が誰にでもある、という考えが間違いなのでしょうか。
そうではないはずです。なぜこの子どもは問題行動ばかり起こすのかという問いを持っていただけたのならばこの本を開いてください。問題行動の理由とどうすればよいかが見えてくると思います。
本書に出てくるキーワード
- 優越性の追求
- 尊敬
- 課題の分離
- 目的論
人は本来、成長したいという要求が本能的に備わっていること
(アドラーの考えでは、)ありのままのその人を認めるという意味。
馬に水を飲ませたくても私たちにできるのは馬を水飲み場まで連れていくことだけです。それ以上の介入はできません。
つまり、自分の課題と他者の課題を明確に分けて、相手の課題に侵入しないことが大切という意味。
人の行動は過去の原因から起因するのではなく、未来に向かう目的があって行動する。