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【シリーズ】おすすめの1冊『寿命を買い取ってもらった。1年につき、1万円で。』三秋 縋

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シリーズ『おすすめの1冊』第53回です。
僕がおすすめする本や、話題の本などをご紹介していきます。

今日、ご紹介するのは三秋縋さんの「寿命を買い取ってもらった。1年につき、1万円で。」。

目次

『寿命を買い取ってもらった。1年につき、1万円で。』三秋 縋

 タイトルの通り、二十歳の主人公は金を得るために寿命を売ることになった。主人公の寿命にどのくらいの価値があるのか査定してもらう。結果は、最低限の1年につき、1万円で、合計30万円。彼は唖然とした。査定は、本人の今後の社会貢献度や幸福度を計ったものだ。彼は小学生のとき優秀だった。周りを見下してもいた。それが、最低価格のこの結果。彼は、30万を手にして帰宅した。残りの寿命は3か月。

 彼は、死ぬ前にやりたいことをリストアップするも、監視員に「他の人が死ぬ前にやりそうなことに見える」指摘されて納得する。
 友人と久々に再開するも、話がかみ合わない。お互いに好意を寄せていた幼馴染と再会するも
タイミングが遅すぎた。自分にはなにもないと思い知らされるだけだった。とくにやりたいことがないという事実に嫌気がさしてくる。

 寿命を売った人間には監視員がつく。価値がないと査定された命が3か月で何ができるのか。と考えながら行動し、監視員と話すうちに次第に打ち解けてくる。
 最期には、名を遺すチャンスもあった。だが、主人公は結局、なにものにもならなかった。それでも、幸せをつかむことができた。もちろん、世の中に貢献したというわけでもない。けれども、彼の寿命の価値は上がっていた。

 道徳では、「命の価値とか、命の重み」的なタイトルで道徳の授業を受けていた記憶がある。親が悲しむからとか、一人に一つしかない命だから、ご先祖が紡いできた命からという理由で「大切さ」を説くことが一般的だと思う。だが、本当にそれだけなのか。
 それよりも、なぜ最後に彼の寿命の価値が上がったのかを考える方が有意義な気がする。

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