【シリーズ】おすすめの1冊『逝年』石田 衣良

こんにちは、りゅうまです。

シリーズ『おすすめの1冊』第91回です。
僕がおすすめする本や、話題の本などをご紹介していきます。

今日、ご紹介するのは、石田衣良さんの「逝年」。

『逝年』石田 衣良

『娼年』のあらすじ

 リョウは1年前に娼夫としてル・クラブ・パッションで働いていた。バーのアルバイト中に御堂静香にスカウトされたのが始まりだった。リョウは女性を抱き続けることで今までつまらないと思っていた女性の魅力を知ることになる。しかし、1年前、クラブパッションはリョウの友達に摘発された。オーナーの御堂静香はHIVを抱えているため医療刑務所へ。リョウは娼夫から普通の大学生に戻っていった。

『逝年』のあらすじ

クラブの再開
 リョウは御堂の娘である咲良と、同僚でクラブのナンバーワンであったアズマとともにクラブの再開を企てていた。問題は人手だ。どう考えても2人ではすぐにパンクしてしまう。しかし、クラブパッションの品格を保つためには、誰でもいいわけではない。

新人の発掘
 噂のバーには3人の男性バーテンがシェイカーを振っていた。1人目は荒っぽくクラッシュアイスでも作っているかのように振る。2人目はすべてを計算しながら振る。どちらもル・クラブ・パッションにはいらない人材。3人目、こちらは最も長い列を作っていた。淡々とカクテルを作る様子は昔の僕を思い出す。そして、御堂からは、リョウくんはリョウくんを探しなさいと言われている。

 アユムと名乗るバーテンは、性同一性障害でFTM、心と身体の性があっていない、ことを告白した。アユムの心は男性で、身体は女性なのだ。

御堂静香の出所と現実
 御堂静香の出所が決まった。しかし、リョウは御堂が長くないことを知らされる。患っていたウイルスに耐性がついてしまい、薬が効かなくなってしまったのだ。リョウは御堂への思いがあふれて止まらない。御堂の最期の願いはリョウとのセックスだった。

感想

 性に関してこれほど美しく描写できる作家はそういないと思います。欲望という本能的なセックスと、人間らしいコミュニケーションを含んだセックスとがバランスよく描かれています。ル・クラブ・パッションを訪ねる女性は別にみだらというわけではありません。しかし、満たされていないことも事実です。会話や手をつなぐことと同様に、一歩踏み込んだコミュニケーションを求めているだけです。こうした、本能と理性のバランス感覚は決してほかの小説やインターネットからは味わえないでしょう。この小説から「エロ」や「いやらしい」などという低レベルな言葉は思い浮かびません。僕は「高貴」という言葉がよいと感じました。
 
 また、性同一性障害に切り込んだ展開もあります。アユムです。アユムの本名はあゆみ。母親は理解を示していますが、父親が認めきれずお互いに距離を置いていたのです。父親はリョウに対して「こんな仕事をしていたら、あゆみは戻れなくなる。」という言葉を発します。この言葉からアユムの抱えている苦悩がわかると思います。

 性というのは本当に幅広くなりました。もちろん認められないものもありますが、その幅の広い性に、拒否感を抱く人が減っていけばいいなと思います。

 そして、読んでいて10代の子どもたちにもこの本のようなセックスを伝えたいなと思ったので、次の記事で性教育について熱く語らせてもらいます。

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