シリーズ『おすすめの1冊』第6回です。
僕がおすすめする本や、話題の本などをご紹介していきます。
今日、ご紹介するのは石田衣良さんの「sex」。
『sex』石田 衣良
気になるけど買うのが恥ずかしい。店頭に並んでいるこの小説にしばらく手が出せなかった理由です。けれども、男心にとても気になる。意を決して(ほかの本と紛れ込ませるように)買いました(笑)。
12編の短編小説からなっていますが、どれもおもしろい。石田衣良さんは、性をとても真摯に受け止めているのだろうなと思いました。汚いものとか、恥ずかしさなど一切なくて、呼吸と言いますか会話のように自然な、それでいて美しいものとしてとらえている。恥ずかしさでさえも楽しさであると。そんな気がしました。あとがきでも「性はもっと彩り豊かで」と書かれています。本書では、それこそ彩り豊かにセックスについて表現しています。例えば『ソウルの夜』では、男の生殖活動を脚本家の仕事と照らし合わせています。『クレオパトラ』では、「ごくごくと命のリレーを刻む」、そして『落葉焚』では行為自体を自転車に例えています。このように幅広いたとえに加えて絶妙で直接的な表現たち。決して不快になることがありませんでした。これは、物語自体を楽しんでいるドキドキ感なのか、興奮なのか……。もはや、自分ではどちらなのかわかりませんでした。少なくとも『二階の夜』はその両方を感じていたと確信しています。
『文字に溺れて』は14歳の性です。あの、覚えたての頃はどのように気持ちを落ち着かせていましたか?初々しさ漂う、このお話は興奮とともに、懐かしさや嫉妬も感じるかもしれませんね。
正直小説の中身はとてもぼくの現実とかけ離れていました。でも、セックスは、ただの生殖行為でもなければ、快楽を求めるだけのものでもない。それ以外の大切な何かを得ることができるのだと思いました。それが満足なのだとわかった気がします。やはり、ぼくは性について恥ずかしいととらえていることが払しょくしきれていません。ですが、少しだけ身近に感じることができるようになりました。