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【シリーズ】おすすめの1冊「ゼツメツ少年」重松 清

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シリーズ『おすすめの1冊』第14回です。
僕がおすすめする本や、話題の本などをご紹介していきます。

今日、ご紹介するのは、重松清さんの「ゼツメツ少年」。

目次

「ゼツメツ少年」重松 清

1ページ、1ページがとても重い作品だった。でも、手は止めることができない。正義感の強さからクラスメイトに無視されているリュウ。小学生の頃から兄にいじめを受けているタケシ。生まれたときから亡くなった姉に投影されて育ったジュン。それぞれに居場所はない。
小説家であるセンセイのもとに届く不思議な手紙。誰がおくってきているのか。未来に向かっていくはずの子供たちがゼツメツしそうだと訴える。ゼツメツとはどういう意味なのか。この話に希望はあるのか。最後ぼくは、泣きそうになった。感動の涙ではなく。
後悔、成長、幻想、憎悪、時間、正義、孤独、いろんな感情が3人の背景に溶け込んでいて悲しさと怒りと怖さと恥ずかしさがごちゃごちゃになっていく。
現実と物語とを何往復もする。これは3人のフィクションであることをずっと言い続けてくるのである。物語の主人公になったようなという感覚は得られなかった。本当の主人公はだれなのかわからない。
終わりに向かっていく物語。そこに希望はないのかもしれない。けど絶望もなかった。ゆっくりと終わりに向かって、前に進んでいく。
でも不思議と明るさを保って進んでいる。3人は出会うべくして出会っているのだろう。そこには3人の成長というか心を取り戻していくような話が詰まっているのである。家出の途中でいろんな大人たちと出会う。その大人たちは、解決へと導いてくれるわけではない。だが彼らを1人の人間として見ている。大人だから言えることでもあるけれど、会話の中に大人と子どもという壁はない。だからこそ、彼らは心を開き、ちょっとした居場所を見つけられたんだと思う。

ゼツメツ少年は4月からずっと紹介したかった本だ。でもなかなか伝えられる言葉や文章が見つからなかった。何度か読み返したがやはりこの本の魅力とかオススメポイントをうまく表現することが難しい。強いて言うならいじめられていた身として共感できる部分があった。「なぜ言い返さないのか」と言われるのがきついということとか特に。でもそれだけではない。3人が生き生きとし始めていく過程もいいし、さっきも言ったように現実と物語が繰り返される不思議な感覚もよい。具体的にいうのは難しいが心地よさともワクワク感ともかけ離れた感情で読んでいたのは確かで、あえて表現するならずっと哀しみながら、さびしくなりながら読んでいて、おもしろかったのである。

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