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【シリーズ】おすすめの1冊『ちょっと今から仕事やめてくる』北川 恵海

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シリーズ『おすすめの1冊』第15回です。
僕がおすすめする本や、話題の本などをご紹介していきます。

今日、ご紹介するのは北川恵海さんの「ちょっと今から仕事やめてくる」。

目次

『ちょっと今から仕事やめてくる』北川 恵海

サービス残業、有給消化、相談できない職場雰囲気などブラック企業がブラックと呼ばれる理由はいくらあるだろう。この話は厳しい競争を強いられ、上司に毎日のように怒鳴られながら仕事をする隆(たかし)の物語である。

駅のホームでふらふらと歩いているところにヤマモトと名乗る男が腕を引っ張ってきた。「久しぶりやな!俺や、ヤマモト!」
だが、隆はその顔に全く身に覚えがない。ヤマモトの勢いに流されそうに居酒屋で飲むことになる。そこから、ヤマモトと隆は友達となり毎週のように飲みに行く。ヤマモトから励まされながらブラック企業でも少しずつ仕事のコツを覚えていく隆。このままうまくいくかと思いきや何度も何度も確認したはずの受注にミスが発覚する。相当落ち込む。さらに、ヤマモトのことを調べていくと記憶に残るヤマモトは今ニューヨークにいることがわかる。今会っているのは誰なのか。何のために俺に近づいてきたのか。疑心暗鬼になりながらヤマモトの明るさに押されて付き合いを続けていく。

隆は自分のミスを取り戻そうと自分なりにフォローするがすべて空回り。

「人を怒らせることだけは天才だな」と上司に揶揄される。いつも優しい先輩も当たりが強くなる。何度も謝るが鬱陶しそうにされる。自分なんて役立たずの人間なんだろうと自分を責め続ける。悪いのは全部自分なんだ。本当に会社に申し訳ない。どうしてこんなに自分はダメなんだろう。そうして完全に自信を失った隆は自分の価値を見出せず自殺を決める。
屋上で回顧していると、後ろでヤマモトの声がした。

「あのさ、隆。人生は誰のためにあると思う?」この問いで隆は自分のためと答える。だが、それは半分正解だそうだ。もう半分は誰のためにあるのか。

隆はそのあと、電話をする。久しぶりの電話だった。
普段は忘れやすいモノかもしれない。本を読んでいるとふと訴えてくることがある。そして僕は確かに当たり前ではないんだ。と静かに思うのである。

最後、隆が仕事を辞めるときの上司とのやり取りは爽快である。よく言った!!と思ってしまい、そこで僕は意外にも隆をただの読者としてではなく、心から応援していたのだなと気づいたのある。ブラック企業で働いて愚痴を吐く人に対して辞めたらいいのにと言ってしまうが、仕事を辞めるのはそんなに簡単はことではない。理由は辞めるか辞めないかの選択だけではないからだ。仕事を辞めたくても辞められない人の考え方や不安を変えなければならない。それは並大抵のことではないだろう。安易な励ましや仕事を辞めるように説得することは逆にその人を追い詰めることになるかもしれない。隆は、2度自殺しそうになる。その窮地に立ったからこそヤマモトの言葉が響いたのかもしれない。正体がよくわからないが、今までの積み重ねてきた友情が隆を救ったのかもしれない。

理屈じゃない友情というのはアニメにしか似合わないだろうか。ヤマモトと隆の出会いは無茶苦茶だ。しかも人違いとわかっていてもどんどん友達となっていく。彼らは一緒に何かに立ち向かったわけでも、同じ目標に向かって走るなんてことはしていない。だが、しっかりと友達になっているのである。そして、そこになぜか違和感がない。2人の友情を最後まで見届けてほしい。

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