シリーズ『おすすめの1冊』第20回です。
僕がおすすめする本や、話題の本などをご紹介していきます。
今日、ご紹介するのはR.J. パラシオさんの「ワンダー Wonder」。
『ワンダー Wonder』R.J. パラシオ
オーガストは生まれたときから、顔が普通ではない。何も知らない人がオーガストの顔を見たら息を飲む。驚くと失礼になる。けれど「驚きっていうのはごまかすのがむずかしい感情で、驚いていないのに驚いているふりをするのも、驚いたときに驚いていないふりをするのも、むずかしい。」(ジャスティン)のである。
オーガストは五年生になるまで、学校に通っていなかった。本人が行きたくないといっていたからだ。彼の両親は彼をずっと守ってきた。なるべく傷つかないように。ところが、母親の決断でオーガストはビーチャー学園への入学を勧められる。それがオーガストの環境をがらりと変えていったのだった。
学校に慣れるには時間がかかる。オーガストもそうであるが、周りがオーガストの顔にいちいち反応しなくなるまでにも時間がかかるのである。それを救ってくれたのがジャックだ。ジャックは入学前、オーガストに学校を案内した同級生の一人である。優しいジャックはすぐにオーガストと仲良くなり親友になる。でも、厄介なのはオーガストをよく知らない子どもたちだ。しばらくするとオーガストは明らかに避けられていることに気が付く。理由はオーガストに触るとペスト菌がうつるという噂が広まっていたからだ。
オーガストの顔のことで悩むのは、オーガストだけではない。姉のオリヴィアもジャックも悩み苦しむ時期がある。それは、愛する弟として、親愛なる友人として抱く感情と、周りがみるオーガストの目やオーガストと一緒にいる自分に向けられる目に対するつらさ。さらにそんな感情を持つことはいけないことであると思いながらも、ネガティブな思いを抑えることができない自分への怒りと葛藤。この葛藤が彼らを成長させていく。
オーガストもいろんな人と接する中で成長していく。ジャックとケンカしたとき、同級生のジュリアンからいじめを受けたとき、課外活動で7年生とぶつかったとき、中でも愛犬のデイジーがなくなっときは彼の心を大きく動かしたと思う。母親と口喧嘩をして自分の部屋に閉じこもると母親はいつも慰めに来た。そして互いが謝り終結する。しかし、今回はいつものように部屋に閉じこもっても母親はオーガストのもとには来なかった。しばらくして姉が部屋に行きた。
「オギー!早く来て。ママが話があるって」「ぼく、あやまらないからね!」「オギーのことなんかじゃない!世の中、あんたを中心にまわっているわけじゃないんだから!」いままで大切に育てられてきた男の子にとっては強烈な出来事だったと思う。
これはフィクションだが、オーガストの病は検索すればすぐに出る。調べるかどうかはまかせるが、調べてもオーガストの顔は想像する余地をきちんと残してくれていると思う。ぼくは途中で調べたが、イメージが偏ったわけではなかった。それは読めば感じてもらえる部分だと思う。