シリーズ『おすすめの1冊』第31回です。
僕がおすすめする本や、話題の本などをご紹介していきます。
今日、ご紹介するのは重松清さんの「疾走」。
目次
『疾走』重松 清
これは、どんな物語か。そう聞かれても答えられない。家族。人間。繋がり。キーワードを並べたが、抽象的に「人間」の物語という答えしか出てこない。だがしっくりくる。
沖の人間と浜の人間がバラバラになり、シュウイチの放火で家族がバラバラになり、神父の兄弟は恋愛でバラバラになっている。えりは、心がバラバラな親のもとに生まれ、両親は自殺。
シュウジは、兄の放火が原因で仲良しだった徹夫にいじめられる。
大阪で、あかねとsexを経験し、暴力団であかねの恋人である新田に暴力を受ける。新田に連れられたホテルでみゆきと出会い、新田を殺して、東京に逃げる。
東京で新聞配達をするが、初給料を同じ部屋の同僚にかすめ取られる。
上下で約760ページの物語をすべて語ることができない。申し訳ない。
シュウジを中心に渦巻く、登場人物たちの欲望や身勝手さ、それらは必ず人間に存在しているものであろう。そして、それらは必ず尻拭いしなけらばならない。それらをすべて受けているのはシュウジだ。シュウジは優しい。だが狂いだした運命を切り開いていく、なんてきれいな物語はここにはない。壮絶な運命を背負って最後は自分の町で死ぬ。