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【シリーズ】おすすめの1冊『キケン』有川 浩

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シリーズ『おすすめの1冊』第33回です。
僕がおすすめする本や、話題の本などをご紹介していきます。

今日、ご紹介するのは有川浩さんの「キケン」。

目次

『キケン』有川 浩

成南電気工科大学の「機械制御研究部」。略して、【機研】だ。

 3章のあらすじ
 1章は機研の部長、上野直也という男の紹介。小学4年生から始まるいたずら……というか、爆破実験の数々。ガチャポンのカプセルで作った爆弾を地面に埋めて爆破させ、「ゆうべ地震がありませんでした?」と近所でうわさになるほどの実力者(?)なのである。この男に1回生の元山、池谷を含む9名は振り回されていく。
 そんな上野を支えるのは、クールで厳しい大神宏明。大神はその迫力から大魔神の異名をもつ。この二人が絶妙なバランスを醸し出してくれる。

 さて、大学といえば学祭である。機研は代々ラーメンを営み、1日500食、合計100万円近くの売り上げをたたき出すという本気ぶりだ。上野曰く、「遊びじゃねーんだ」だそうだ(笑)。
 そして、今年は上野から売り上げ100万円を超えろという指令が出てしまった。親が喫茶店を営んでいる元山は「お店の子」として意地でラーメンの味を完成させる。いよいよ始まった、学祭。うたい文句は「看板に偽りなし!『奇跡の味』、今年は初日から最終日まで!」。準備日から学生に売り出したかいもあって、口コミで広まり、初日から大盛況。
 「2人で来た客には同時に出す」。「カウンターでは客の順序を後先にするな」、さらには出前も取るという徹底ぶりである。
 店の前にはライバルPC研究部がインスタントラーメンを売っているが、元山が何日も試行錯誤をしたラーメンとは勝負にならず、閑古鳥が鳴いていた。だが、学祭5日目にして、PC研の奴らから嫌がらせを受ける。元山が出前にいったまま戻ってこないのだ。元山が持ってきたラーメンをPC研はわざとこぼして金を請求し、元山と押し問答になっていた。たかが500円でもプライドをかけて一歩も引かなかった元山の態度は痛快で、それをバイクで助けに来た上野がPC研の奴らを追い掛け回す姿はもう笑うしかない。

 魅力
 上野の無茶ぶりに突っ込む部員たちのリズム感あるやり取りが癖になる。そのコミカルさとは裏腹に無茶ぶりをしつつも筋の通った上野と厳しくも後輩思いの大神に学び、成長していく1回生たち。このメリハリのある場面に引き込まれ、いつしか読者は1回生の1人のように上野に振り回されている感覚になり、一緒に上野先輩に突っ込みを入れてしまっている。

 最後にお気に入りの一節を紹介して終わりにしたい。(最終章)卒業後、奥さんと共に学祭に訪れた元山が変わらない機研のラーメン店の忙しさをみて「楽しかったのはまさにその厨房の中で、シフトが終わるなり植込みに突っ込んで寝るほど極限まで働いているまさにその瞬間なんだ。」と懐古する。
 似たことをぼくがリスペクトしている予備校講師の関正生氏が言っていた。「振り返ると必死に勉強していたあの時が一番輝いていたなって思えてくる。」と。

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