【シリーズ】おすすめの1冊『貴族と奴隷』山田 悠介

こんにちは、りゅうまです。

シリーズ『おすすめの1冊」第34回です。
僕がおすすめする本や、話題の本などをご紹介していきます。

今日、ご紹介するのは山田悠介さんの「貴族と奴隷」。

『貴族と奴隷』山田 悠介

 「貴族と奴隷」を読む前に
 ジンバルドー氏のスタンフォード監獄実験をご存じだろうか。囚人役と監修役をコインで決め、与えられた仕事をこなす。しかし、監修役の被験者が自発的に囚人役を虐待し始めたため実験は1週間で中止になった。という1971年の人体実験だ。これは残虐な実験とされている。とはいえども興味深いデータも残っている。監修役がエスカレートしたというのはまだ、イメージできるかもしれない。人間の理性ははかないものなのだと再確認くらいの感覚もある。しかし、次だ。なんと囚人役も監修役の言いなりになっていた。つまり囚人役に徹していたというのが驚きだ。というのも、どちらの役にも事前に途中リタイアを自由に宣告できることを伝えられていたのだ。にもかかわらず囚人役ですら、自らリタイアをするものはいなかったのだ。恐ろしい……。『貴族と奴隷』はまさにこの実験をモデルとしているのだと思う。

 あらすじ
 中学生30人を集め、そのうち5人から貴族役を選び、残りは奴隷役としてふるまうようにと言われる。貴族は自由に食事ができるが、奴隷は貴族が分け与えなければ自ら食料を得ることができない。貴族に与えられているものは、奴隷を好きに扱える権力と、自由な食事、専用の部屋、銃、金色の服である。奴隷役は牢屋のような部屋と黒い服。彼らを拉致した男たちは貴族と奴隷の差を奴隷の仕事を説明した後、奴隷と貴族になり切れというのみであった。にもかかわらず次第に、貴族役5人は語気が強くなっていき、うち2人は貴族役を楽しむようになる。主人公は盲目の少年、黒澤伸也。見えないという状態で周りに助けられながら貴族のしてくる仕打ちに耐え続けるが……。

 魅力
 この小説の面白さは、実際にあった事件とリンクしている(あくまでも予測だが。)ことだけではない。この主人公、黒澤伸也は全盲なのである。よって情報はすべて彼の耳や肌で感じるものだけである。もちろん友人が伸也に何が起こっているのかを教えてくれる。だが、あくまで直接、目にして感じたことを読者が得ることはできないのだ。

 貴族と奴隷役に分ける時点で貴族役がエスカレートしていくことは容易に想像がつく展開だと思う。だが、全盲の少年を主人公に置くことで情報が制限される。わかっているはずなのになぜか見通しが持てないという不思議な不安を体験するだろう。

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