シリーズ『おすすめの1冊』第36回です。
僕がおすすめする本や、話題の本などをご紹介していきます。
今日、ご紹介するのはマネー・ヘッタ・チャンさんの「ヘッテルとフエーテル -本当に残酷なマネー版グリム童話-」。
『ヘッテルとフエーテル -本当に残酷なマネー版グリム童話-』マネー・ヘッタ・チャン
この世に蔓延る詐欺。誰かのお金が増えれば、誰かのお金は減る。知識がないのに金持ちにはなりたい。そんな甘ちゃんに付け入るのは詐欺師だけじゃない。銀行、国家、保険会社もそうである。そして我々は募金したお金の行方を、本当に知っているのか。世の中、善を利用するもの少なくなかれ。
この本は、グリム童話節で騙す側の技術と騙される側の安直な心理を描く。全11篇でいろんな手口紹介してくれる。
第7話 『裸のフエーテル様』
いろんな儲け話に乗って失敗を繰り返し、借金まみれのフエーテル。ある日、電車で「借金を整理します。」という広告を見つけた。さっそく弁護士事務所に電話すると「無料」で相談に乗ってくれるというのです。次の日、その溺冷素(できれいす)弁護士事務所を訪れると、「複数の借金先をひとつにまとめて手続きをすれば、今まで払った分も帰ってくるし、これから支払う額も減るとのことでした。」フエーテルはそのまま手続きをし、毎月の支払い額が減って大喜びです。
ところが、数か月後、友人のアホスギンチャンその話をしたところ契約をよく見るように言われました。すると、毎月の支払額は減っているけれど、その分返済期間が伸びて結局返す額は前よりも増えていることに気が付きました。「見ず知らずの弁護士が無償で助けてくれるなんてことを信じるなんて、アホすぎるんちゃうん?」といわれてしまいましたとさ。
「グリーム婆さんのよくわかる解説」では、電車広告の値段や無料相談してその弁護士がどのように生活するのかよく考えるようにと2ページくらいでわかりやすく解説してくれる。
こんな風にグリム童話に出てきそうな名前の他にも、団体に面白いものを付けている。例えば、ミツギシGFJ銀行やNPP株、ソルトマナブなどなど……。こういった名前のセンスも読みたい欲を上げてくれるが、最後の一言「グリームおばさんの悪知恵袋」もおもしろい。第4話『アホスギンチャン』の悪知恵袋には「遠い将来の約束はごまかしやすいし、やぶりやすい」とある。これだけで何の話かは多少見えてくると思う。
信じやすいタイプの方はグリム童話を手に取る感覚で『ヘッテルとフエーテル』をどうぞ。