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【シリーズ】おすすめの1冊『切ない恋愛小説3作品』

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シリーズ『おすすめの1冊』第39回です。
僕がおすすめする本や、話題の本などをご紹介していきます。

今回は、切ない恋愛小説3作品をご紹介します。

目次

『切ない恋愛小説3作品』

陽だまりの彼女(越谷オサム)
とても甘い恋愛小説である。とにかくのろけの場面が多い。いや、幸せそうな、と表現した方がいいのか。ぼく的には読んでいられないくらい、べったべたなシーンもあるのだが、本人たちもバカップルと認めているのでなんとか許せた。

 浩介と真緒は中学時代の同級生だった。二人は浩介が中3のときに引っ越して以来連絡を取っていなかったが、社会人になって再開し、ゴールイン。そのまま、幸せな結婚生活かと思いきや幸せは長くは続かないのである。
 真緒にはどうも不思議なところがある。①中学時代はとってもおバカだったが大学はとても有名な女子大に合格した。②3階から飛び降りても無傷ですむ。そして何より過去が引っかかる。真緒は13歳で里親の渡来家に引き取られた。③真緒が保護されたとき、本人の情報が一切発見されなかったのだ。名前も年齢もわからない。真緒という名も里親がつけたのだ。しかも、保護したときは片言の日本語しかしゃべれなかったそうだ。さらに、真緒は裸で町を歩いていたという噂も不可解だ。

 真緒の不思議さに推理小説らしさを感じ、中学時代の回想シーンでは青春を味わえる。そして、クライマックスは予想もしていなかったハッピーエンド。楽しませてもらいました。
 最後に愉快な一言を紹介!
「真緒、お前、金魚のブライアン食ったろ」

Story Seller(有川浩)

「致死性脳劣化症候群」。

 医者にそう診断された。頭を使うほど劣化が加速し死に至る。彼女は小説家だ。夫が才能を見つけてくれた。彼女は学生の頃から小説を書いていたが、その出来の良さに嫉妬され先輩から過度にダメ出しをされる。そこから誰かに見られるのを避けてきたが、同僚に会社でさしっぱなしにしていたUSBの中身を見られ、小説を見られてしまう。はじめは、駄作を見られたとショックを受けたが夫は読書好きとして太鼓判を押す。その言葉を少しづつ信じることができるようになっていき、2人はやがて結婚する。そして夫の後押しで、小説を投稿し賞を取る。彼女の小説は世間からも評価されるようになるが、水面下に潜んでいた問題が浮上する。実家のことだ。古く、お堅い家である彼女の家は小説家志望の人間が多い。彼女の書く小説とは全く違う作風でどんなに売れても受け入れられるどころか、売れるほど辛辣な評価が下って行った。しかも、その筆頭は父親だ。電話で「お前の小説はなっちゃいない。こんなものを書いているからお前は駄目なんだ。」と言われる。彼女は文句があるなら自分が作家になって書けと言い返す。しかし、今度は夫に向かって、「お前と結婚したから悪くなった。昔なら素直に言うことを聞いたはずだ。」と言ってくるのだ。父親の言い方からして難、有りということがわかるが、現実はもっとひどい。
 彼女の祖母は素人が介護できないレベルの認知症になっていた。しかし父親は本人が嫌がっているからと言って施設に入れようとしない。とうとう民生委員から彼女のもとに連絡が入り、尻ぬぐいをすることになった。実家の荒れようは想像以上だった。
 玄関には祖母の人糞。部屋には悪臭が漂い、近所から苦情が出ている。祖母はもうお風呂も入らないし、トイレも使わない。彼女は夫と母親と一緒に祖母を係員に引き渡す。むろん父親は手伝わない。それどころか「送迎サービスなんて余計な金がかかることを勝手に決めて。ばあさんがいつまで生きるかわからんのに、俺に一言の相談もなく勝手に無駄使いをきめて」と言い放つ。彼女は札を鷲摑みにして父親の顔に投げた。

 彼女の病気の兆候が見え始めたのは、その日の自宅に着いた頃だった。「あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!」
抑揚のない一本調子の高い笑い声。全身を痙攣させ始めた。
 致死性脳劣化症候群は頭を使うだけ消耗し、死期が近づく。だが、彼女は小説を書くことがやめられない。一番大好きな人に読んでもらうために。

ぼくは明日、昨日のきみとデートする(七月隆文)
 「彼女の秘密を知ったとき、きっと最初から読み返したくなる。」これは、背表紙の紹介文を引用した。まさにその通りだ。

 福寿さんは、別の世界の住人。現実とは時間の流れが逆になっている。福寿さんの世界の人間が、高寿(たかとし)の世界に行けるのは5年に1度の40日間だ。

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