シリーズ『おすすめの1冊』第49回です。
僕がおすすめする本や、話題の本などをご紹介していきます。
今日、ご紹介するのは殊能将之さんの「ハサミ男」。
『ハサミ男』殊能 将之
今回もまた、派手に騙されてしまった。数々の登場人物を疑い、伏線を見落とすまいと息を巻いたが、結局先入観には勝てなかった。
本書は、僕の姉が3年ほど前に勧めてくれていたのだが、500ページという分量と不慣れなミステリーとで遠ざかっていた。さらに、表紙があまり好みでない(笑)。ただ、50ページほど読み進めるとあとは、あっという間だったのが悔しい。
あらすじ
過去に少女が2人殺された。2人とも首を絞められたあと、はさみをのどに刺されて殺害されている。世間はこの犯罪者をハサミ男と呼ぶ。
ハサミ男は、次のターゲットを樽宮由紀子に定め偵察していた。だが、ある日、待ち構えていても樽宮は現れなかった。その日は諦めて帰ることに決めた。その帰り道の公園で、樽宮由紀子の遺体を発見した。樽宮は、首を絞められ、はさみをのどに刺されて死んでいた。ハサミ男が、その場を去ろうとしたときに誰かが近づいてきた。今逃げると不自然だ。でも、荷物検査をされるとやばい。ハサミ男は、バッグの中のはさみを投げ、第一発見者になることを決めた。
おそらく、ハサミ男の犯行に見立てるためだろうが、なぜ自分以外に彼女を殺す必要があったのか。ハサミ男は調査をはじめる。
一方、警察も調査を始める。この犯行はハサミ男なのか、別の模倣犯なのかわからない。いつもと違うのは、被害者に刺さっていたはさみとは別にもう1丁同じはさみが、茂みの中で地面にささっていたことだ。ハサミ男が落としたのだろう。けれど、普段から何本も所持しているのか。それに落としたら気が付くだろう。警察は2丁のハサミに揺さぶられていく。
登場人物
ハサミ男
アルバイトで出版社に勤めており、上司の信頼も厚い。
二重人格の持ち主で、心の中に医者としてもう一人いる。自殺願望があるが、何度も自殺に失敗しており、そのたびにその医者と面談をしている。
過去に2人の少女をハサミで殺しており、3人目は樽宮由紀子をターゲットにするも、誰かに先を越されてしまう。内心、誰が殺そうが関係ないと思いながら、結局殺した人物が気になり調査を始める。鋭い洞察力で聞き込み調査を進めていく。
磯部
若い新米刑事。警視正の堀之内に気に入られ、助手として調査を進める。
堀之内
犯罪心理分析官を務める。磯部の純粋さを買い、パートナーとして選ぶ。
奥さんとは別居中。
樽宮由紀子
美人で、学校の成績も優秀。複数の男と付き合っており、そのほとんどと肉体関係がある。特に本命がいるわけでもないようだ。
血のつながっていない弟がいる。友人関係でも特にこじれていることもなく、男性関係についても知っている者は多い。
そして、突然、殺される。
椿田亜矢子
樽宮由紀子の友人。彼女が男性関係を持つことに対して、彼女なりの実験だったのではないかとハサミ男に話す。
樽宮健三郎
樽宮由紀子の弟。血のつながりのない姉の由紀子との会話は、特に不自然さはない。だが、姉の方から話しかけてくることが1度もないことに気づいている。また、姉を一人の女性としてみてしまうなど、苦しみが重なっている。