シリーズ『おすすめの1冊』第63回です。
僕がおすすめする本や、話題の本などをご紹介していきます。
今日、ご紹介するのは、暖あやこさんの「14歳のバベル」。
目次
『14歳のバベル』暖 あやこ
あらすじ
日常生活の裏で、粛々と計画は進められていた。地上の人間たちは何も知らないまま日々を送り続けている。
冬人とシルトの出会い
冬人は発作に悩む14歳の男の子だ。発作にみまわれたある日、赤茶けた空間で目を覚まし、シルトと名乗る同い年の男の子と出会う。そして、シルトはその世界の王であることを知った。
再び意識が遠のき、目を覚ますと病院のベッドだった。シルトに会うために薬草学の医者に頼み、意図的にその世界に向かうようになると2人の間に、友情が芽生えていった。
記者と吾郎の出会い
冬人の父親の吾郎はビール会社に勤めるサラリーマン。ヒステリックな妻と思春期の冬人に疲れ始めている。そんな彼の前に、鷹野と名乗る記者が現れた。鷹野はシンビールの売れ行きに裏があると睨んで取材を続けていた。鷹野の懐疑主義と吾郎のコトナカレ主義が静かにぶつかる。
面白さ
大きな組織に立ち向かう、吾郎と冬人という構図が面白い。2人は互いに避けていたはずなのに別々のきっかけが巡り、結局同じ方向を向いていたことに気づき笑顔をこぼす。その場面は安心感と希望を読者に与えてくれる。
シルトは大人びた青年のように描かれている。そんなシルトに冬人は魅力を感じていた。でも、そんな彼の精神が崩れ、吾郎に抱きしめられる瞬間がある。それが、シルトも子どもなのだという安心感と今まで甘えられず、王である威厳を保たなければならない責任の重みを強く感じた場面だった。