シリーズ『おすすめの1冊』第72回です。
僕がおすすめする本や、話題の本などをご紹介していきます。
今日、ご紹介するのは、彩坂美月さんの「柘榴パズル」。
目次
『柘榴パズル』彩坂 美月
あらすじ
あたし、お母さん、おじいちゃん、お兄ちゃん、妹の5人家族。この夏は、なぜかあたしの周りでちょっとした事件が何度も起こる。もしかしたら、妹のももこがトラブルを運んできているのでは?と思うほどだ。でも、いつも冷静なお兄ちゃんが解決してくれる。お母さんは優しいし、おじいちゃんはおちゃめで面白い。ももこはちょっと幼いけれどかわいい妹だ。恥ずかしいけど、あたしはあたしの家族が大好きです。
感想
温かな家族とプチミステリーを合わせた、平和な話。……と言いたいところですが、なにやら不穏な空気をのぞかせるのです。章の始まりには必ずある事件の記事がかかれます。
『深夜の住宅街で惨殺事件』
「何者かが住居に不法侵入し、就寝していた一家を刃物で殺傷した。……」
未来の記事なのか、過去の記事なのか、この家族にかかわりがあるのか、ないのか。温かさとは裏腹に冷え切っているこの事件はいったい何なのかまったくわかりません。
ありきたりかもしれませんが、「家族とは?」と考えざるを得ない結末でした。家族とは束縛でしょうか、居場所でしょうか。家族という繋がりは一方で脆く、一方で強固なものです。幸せはいろいろな場所にあると思います。もし幸せの1つが、家族の中にあるならば、それだけで強運なのかもしれません。