シリーズ『おすすめの1冊』第76回です。
僕がおすすめする本や、話題の本などをご紹介していきます。
今日、ご紹介するのは、百田尚樹さんの「幸福な生活」。
『幸福な生活』百田 尚樹
感想
19編の短編小説集です。物語のテイストは金、性、傲慢、嫉妬、不倫など人間臭いものが多かったです。でも、SFチックなものから、ユーモアあふれるものまであり飽きません。なんといっても主人公の思い通りにならない展開と愉快・痛快・衝撃な最後の1行に笑ったり、生唾を飲み込んだりと楽しめることができました。
ぼくのお気に入り3編のあらすじ
『そっくりさん』
夫はフリーの編集者。帰りが遅く何日も家に帰らないことも常だった。それでも娘を大切にしてくれる愛情と悪くない給料で私は気にしていなかった。
私は学生の頃、友人から「あなたとそっくりな人と会ったよ。」と言われることがよくありました。この世に同じ顔は3人いると言われるので笑い話として受け止めていました。なので、あそこにいるのはきっと夫のそっくりさんでしょうね。
『痴漢』
50歳の英男は幼い妻と娘がいる。ある仕事帰り、運の悪いことに痴漢に間違われてしまう。相手は金を払えば警察にはいかないと言われ、英男は50万円を支払う。しかし、翌日精神的な苦痛を与えられたとして慰謝料を請求される。英男は払っても払ってもなにかと理由をつけられて女から金を要求される。
これは、詐欺だった。穏便に済ませたい英男は警察に届けでると脅されて大金を払ってしまう。詐欺は徐々にエスカレートしていくが、突然殺害されてしまった。
『ビデオレター』
妻が亡くなった数日後、ビデオレターが届いた。そこには妻が映っていた。余命を宣告されてから撮ったのだろう。思い返すといい妻だった。ビデオレターのメッセージには驚きっぱなしだった。自分の浮気や妻を手に入れるためにほかの男を別れさせたことなどすべてばれていたのだ。それでも許してくれていたのか。
あれ、様子がおかしい。
「あなたは私をホトトギスに例えましたね。あれは本当に上手い喩えでした。ホトトギスは美しい鳴き声だけではないのです。托卵する鳥なのです。……。」