シリーズ『おすすめの1冊』第84回です。
僕がおすすめする本や、話題の本などをご紹介していきます。
今日、ご紹介するのは、映画化もされ、2019年1月25日に全国公開された冲方丁さんの「十二人の死にたい子どもたち」。
『十二人の死にたい子どもたち』冲方 丁
あらすじ
廃病院に集まったのは自殺願望のある12人の子どもたち。部屋には12個のベッドがあり、そこで一斉に死ぬのである。しかし、主催者であるサトシが使うはずのベッドにもう一人、少年が横たわっていたのである。少年たちは横たわっている少年とは関係なく、集団自殺を遂行しようとするが、ケンイチが異議を唱えた。ケンイチだけ誰も知らない少年の謎を残して死ぬことを拒んだのである。ほかの者は関係ないといった様子だったがこの集いのルールは全員一致。出ていくのは自由だが、そうでないなら予定通り実行するかは全員一致が原則だ。そして、シンジロウはその少年は殺害されたと推測する。話し合いは30分間。そのたびに実行するか話し合うかの決を採る。話し合いをめぐって12人の思いが、個性が、にじみ出る。
感想
物語は淡々と進んでいるが自殺を決意している少年少女の感情や背景は複雑である。複雑ではあるがむしろ未熟ゆえに短絡的だなとも感じる。
10代の自殺が高いのは事実だが、この物語は自殺に追い込まれていった子どもたちについて考えるよりも、子どもたちをフィルターとした社会や大人たちへの風刺として僕はとらえている。子どもたちから語られる世界はそれこそ全員一致が原則で、少しでも外れればたちまち敵とされかねない世界であったり、物のような扱いを受けたりと酷く映しだされる。この度集まった子どもたちは10代とは思えない落ち着きと思考をもっている者が多い。だからこそ、彼らの語る人々や読んでいる僕の世界が子どもっぽく映ってしまった。
死にたいと思うまでに追い詰められている子どもたちの言葉や性格、その背景などに
胸を締め付けられたり、啞然としたりしながらミステリーとしても楽しめた。でも、読み終わって一番印象に残っているのは誰の背景でもなく、物語が始まったきっかけでもあるケンイチのこだわりである。
集団で死のうとしているところに1人知らない人物がいても関係ないと、多くの人が感じるだろう。さらにそのせいで実行が滞れば大抵の人は反対者に憤りを感じるだろう。しかし、そんな状況でもおかしいと言える(たとえ周りから煙たがられるとしても)ケンイチの勇気とこだわりが僕はかっこいいと思った。
「12人の死にたい子どもたち」は2020年1月31日の金曜ロードSHOW!(日本テレビ系列)で放送されます!!