【シリーズ】おすすめの1冊『最後の医者は桜を見上げて君を想う』二宮 敦人

こんにちは、りゅうまです。

シリーズ『おすすめの1冊』第85回です。
僕がおすすめする本や、話題の本などをご紹介していきます。

今日、ご紹介するのは、二宮敦人さんの「最後の医者は桜を見上げて君を想う」。

『最後の医者は桜を見上げて君を想う』二宮 敦人

あらすじと感想

 副院長の福原は患者に奇跡を信じて最後まで治療を施す。腕も確かで何人もの命を救ってきた。一方同期の桐子は福原とは対照的に死神と呼ばれ、「死」を受け入れ、余生を楽しむように説く。また、2人の同期である音山は普通の医者だ。どうにか学生の頃のように3人仲良くやっていければと願っている。そして、福山の考えが必ずしも正しくないことも桐子のストレートな物言いが良くないことも最も感じているのは音山だった。桐子と福原の考え方は正反対だが2人とも間違ってはいない。それほど、医療技術と倫理的な問題、事実と理想のギャップや矛盾がどちらも複雑に絡んでいるのである。そこで振り回されていたのはなによりも患者である。誰のせいにもできない中で医者を頼らなければならないという耐えがたい矛盾は患者の苦しみの一部である。
 

第一章 とある会社員の死

 会社員の雄吾は選択を迫られた。診断名は白血病。手術は成功したが、再発する可能性がある。しかし、ある移植手術を受け、成功すると再発する可能性がほぼなくなる。ゼロにはならない。リスクも背負うことになる。あくまで成功すればという前提がとても重たい。再発の恐怖を抱えるか、今、目の前の恐怖に立ち向かうか。どちらも幸せとはいいがたい。だれも決めてくれない、どこにも100パーセントがないという恐怖が雄吾と妻を追い詰めていく。

 雄吾は移植手術に臨んだ。その描写がとても印象的だった。

 「次々と臓器が食い荒らされ、体中の昨日が停止していく。(中略)あちこちが焼けたように痛む。しかし悲鳴を上げることも、悶えることも、暴れることもできない。その力がないのだ。」

 雄吾は妻とおなかの子を残してこの世を去った。

 桐子は「奇跡の存在を患者に押し付ける」と表現する。
 実際に福原に勇気をもらい、死の受け入れを促す桐子に反発をする患者はいる。奇跡はめったに起こらないからこそ奇跡であり、またその奇跡は患者の想像を絶する戦いがあってのことだとわかっている。それでも生きることをよしとするのか、苦しむ末に死ぬ可能性もあるのなら死を受け入れるのかは、患者が決めることだとしても残酷すぎる。しかし、医者にとってもまた、残酷であることには変わらない。そんな世界がこの世にはあるのである。

第三章とある医者の死

 福原と桐子の同僚である音山が癌を発症した。ステージは4。ほぼ末期だった。桐子は、死を受け入れるように説得、できないでいた。福原はもちろん全力で助けようとする。しかし、音山も医者である。自分の癌の状態はだいたいわかる。そのうえで手術を拒否したのだ。困惑する福原。桐子も福原も赤の他人である患者には抱かない感情を抱いていた。

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